沖縄・宜野座村営球場の阪神春季キャンプ。打ち上げ直前の2月27日、今季、就任2年目を迎えた金本知憲監督(48)は、特打に励む選手たちを静かに見守っていた。金本監督の選手を見つめる厳しい目は朝のウォーミングアップから始まる。投内連係、フリー打撃、走塁練習、シートノックと、常に選手の塊の中に背番号6がおり、熱い視線を送り続ける。選手も気を緩めることができない。
いつも片手にバットを握って練習を見つめ、球場を後にするまで片時も離さない。本人は「深い意味はない」と語るが、フリー打撃やティー打撃を後方で見守りながら、気が付いたことがあればバットを構えてアドバイスを送り、選手が円陣を組めばその中心でバットのグリップ部分を使って地面に絵を描いて説明していた。バットは選手とコミュニケーションを取る際の、重要なアイテムとなっているようだ。
歯に衣着せぬ物言いとは裏腹に、その指導は優しい。グラウンドでは選手らの笑い声が聞こえ、選手を怒鳴るような場面はまったく見られなかった。金本監督も「若い選手を怒ったことは一度もない」と語る。
「若い選手の失敗はしょうがないと思っている。もちろん、できる選手が怠慢プレーをしたり、集中力を欠いて何度も同じミスをしたりした場合は怒りますが、僕は萎縮させるより、できるだけ勢いをつけさせたいタイプ。選手には伸び伸びやらせたいので、ミスに対して怒鳴るようなことはしません」
キャンプ中にはドラフト1位の大山悠輔にも、バットを構えながらアドバイスを送るシーンが見られた。大山のことを聞くと、指揮官の頬が緩んだ。
「アマチュアには左バッターが多く、右バッターで大きいのが打てる選手がいない。それを大山に期待しています。他球団に2位で指名されるぐらいなら1位でいこうというので指名した。まだまだ力はついていませんが、実戦向きの選手だと思う。いいポイントで打っているから、慣れてくればいいものが出てくるはずです。将来的にはクリーンアップを形成できる、ホームランが打てる選手に育てたい」