【著者に訊け】柳川悠二氏/『永遠のPL学園 六〇年目のゲームセット』/小学館/1500円+税
昨夏、高校野球の名門がその活動に幕を下ろした。桑田真澄や清原和博など数々の名選手を輩出してきた大阪のPL学園。輝かしい戦績を誇る野球部に一体、何が起きたのか。その謎に正面から挑んだのがノンフィクションライターの柳川悠二氏だ。2年半に及んだ取材の一部始終を記した『永遠のPL学園 六〇年目のゲームセット』は昨秋、第23回小学館ノンフィクション大賞を受賞。
今週の「著者に訊け!」はジャーナリスト・森健氏が聞き手を務める。一昨年、稀代の名経営者が人知れず抱えていた葛藤を描いた『小倉昌男 祈りと経営』で同賞を受賞し話題を呼んだ森氏は、やはりメディアの注目を集めながらも謎だらけだった名門野球部の廃部の実態に迫った柳川氏の作品をどう読んだか──。
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本書を手にとると、まずカバーに写る選手に驚く。名門PLの選手とは思えない華奢な体躯。彼らこそ、PL野球部62期生、最後の部員だ。柳川氏も2014年8月、取材をはじめてすぐ、その異様な姿に気づいたという。
「背も小さいし、ひょろっとした体格。野球推薦で入る特待生がいなくなっていて、一般入学の高校生ばかりになっていたんです。超名門のPLに、実に不釣り合いな彼らをはじめて見たときには驚きました」
その取材時、柳川氏は監督に話を聞き、さらなる衝撃を覚える。監督に野球経験はなく、学園で長年国語の教員を務めた、PL学園の校長だった。疑問を覚えた柳川氏は、なぜ専門の監督を使わないのかと尋ねた。校長は野球とは異なる文脈で答えた。監督にも信仰心が求められるんですよ、と。
「そして、いきなり『教団』の内情を語ってくれたんです。そこでわかったのは、想像以上にPL野球部は教団の支援を受けていたということ。野球推薦の特待生が存在できたのは、教団が浄財(信者の寄付)を流してくれたからです。ところが、そのお金が教団から流れなくなった」