毎日の生活習慣で欠かせない「歯磨き」だが、これまで当たり前だと信じていた歯磨き法には、大きな誤解もある。昨年、週刊ポストの「やってはいけない歯科治療」シリーズで業界のタブーを暴き、大反響を呼んだジャーナリスト・岩澤倫彦氏がレポートする。
◆食べ残しを取るのが、歯磨きの目的?
「食事をしたら、すぐに歯を磨きなさい」──学校でそう教えられてきたし、実行している人もいるはずだ。しかし、その考え方は、大きな誤解だったようだ。
「食事の食べカスをずっと口の中に置いておくのは、決していいことではない。しかし、一番大切なのはバイオフィルム(※注)の除去。フロスなどを使用してバイオフィルムを除去するという意識が、まだ日本では普及していません」(歯周病専門医・吉川英樹氏)
【※注/朝起きて歯を触り、ネバネバした膜が覆っていたら、それがバイオフィルム。以前はプラーク(歯垢)と呼ばれていたものと同じと考えていい。その中には歯周病や虫歯などの原因菌が、1g中に約1000億も存在している】
認定歯科衛生士・太田由美氏からは、衝撃的な話を聞いた。歯周病が悪化した人は、口からドブ川のような凄まじい腐敗臭がするというのだ。中高年の男性に少なくないという。
「バイオフィルムの菌によって歯周組織が破壊されると、硫化水素のガスが出るんです。それに白血球の死骸が膿となって出てくるので、かなり強烈な臭いがします。ご本人は気づいていないようですが」
食べ残しの掃除も必要だが、バイオフィルムにこそ意識を払うべきだ。