◆食後の歯磨きが一番大事?
厚労省の調査では、大半の人が一日2回は歯磨きをするようになった。おそらく、朝食後と就寝前だろう。
だが、歯周病専門医・吉川英樹氏は、バイオフィルム繁殖の原理を考えると、朝食後ではなく起床直後のタイミングが重要だという。
「バイオフィルムが口の中で最も繁殖するのが、就寝中だと考えられています。理由は、殺菌作用のある唾液の分泌が、就寝中に少なくなるからです。だから患者さんには、起床時と寝る前、しっかり歯を磨くことを勧めています」(前出・吉川氏)
食事の直後は、口の中が酸性になっている。研磨剤入りのハミガキ剤を付けて、念入りに歯磨きすると、かえって歯を傷めてしまう可能性がある。そのため、軽く洗い流す感覚で済ませた方がいいという。
さらに吉川氏は、食前の歯磨きを勧めている。バイオフィルムを除去することで、歯周病などのリスクを下げることができるからだ。
実は、正しい歯の磨き方について専門家たちの答えは微妙に異なった。ただし、共通しているのは、バイオフィルムを意識した取り組みであり、歯ブラシ1本だけで歯を磨くのはナンセンスということ。
歯の先進国といわれるスウェーデンは1970年代から、定期的に歯科医院でのメンテナンスを受ける体制ができた。
もし、歯を残したいと考えるなら、経験を積んだ歯科衛生士に自分の口に最適な歯磨き指導を受け、フロスなどを使うことを覚えた方がいいだろう。それがスウェーデンで40年前から実践されている「予防歯科」なのだ。
※週刊ポスト2017年4月14日号