◆まだチケットを手に入れる方法はある?
茶屋が上客を探すのは、「協会から委託を受けた時点で定価の90%を協会に納入する」(同前)というシステムがあるから。マス席A(1人1万1700円×4人分=4万6800円)を売りさばいても、茶屋の取り分は4680円しかないし、売れ残ったチケットは協会に返品できない。
そこで利幅を確保するために出てくるのが「手土産」だ。大きな紙袋に弁当や国技館名物の焼き鳥、力士名の入った湯呑みなどを詰め合わせ、座席の料金に1人あたり5000円から2万円ほど上乗せしてセット販売する。手土産の部分で利益を出すのが茶屋のビジネスモデルだ。
「茶屋はチケットを少しでも高く買ってくれる客へ回したい。若貴ブーム時代には、定価4万円の升席チケットが最高で70万円にもなったことがあると聞きます」(担当記者)
手土産の入った紙袋を運んでくるのが茶屋の「出方」だ。たっつけ袴姿の案内係である。
「出方はチケットの販売や集金も担当する。観戦した時に祝儀(チップ)を渡すなどして仲良くなれば、値段交渉次第で完売したはずのチケットを入手できることもある」(同前)
ちなみに席まで案内される際に出方に渡す祝儀は5000~1万円が相場とされ、これを渡しておくと、「狭い升席では邪魔になる大きな紙袋の手土産を終盤まで預かっておいてくれて、大関戦のあたりで持ってきてくれる」(古参ファン)といった気遣いを受けられる。
「出方には北関東からの出稼ぎが多く、本場所前から国技館内に泊まり込むので、両国周辺の飲食店で顔見知りになるファンもいるそうです」(前出の担当記者)
ただ、この5月場所は茶屋と近しい関係にある親方衆でさえチケットの入手が困難な状況だ。若手親方の一人はいう。
「どうしても今からチケットが欲しい人は、大企業や個人で15日間通しの升席を押さえている人を探すこと。15日連続で見に行くことはないから、どこか1日分を譲ってもらう。毎場所のように升席で観戦する熱心なファンのなかには、そうやって席を確保している人が少なくありません」