現在公開中の映画『いぬむこいり』(片嶋一貴監督)で、「犬男」との過激なラブシーンを体当たりで演じている有森也実(49才)。4時間にも及ぶ上映時間の後半は、ほとんどが本能のまま全裸で愛を交わすシーンであることがセンセーショナルに取り上げられているが、劇中ではさまざまな「愛の形」が描かれ、改めて考えさせられる作品になっている。
今作は2010年頃からプロジェクトが始まり、2015年夏に撮影された。両親の闘病や死と重なった作品だからこそ、自身の人生と重ねて、考えさせられることも多かったと話す有森。6月はジューンブライドだが、独身の彼女の結婚観は大きく変わった。
「以前は情熱的に『この人と一緒に暮らしたい』とか、『この人の子供が欲しい』とか、『この人と一緒に年をとっていきたい』って、自分が選んでいるという意識があったんですけど、この作品や、両親を通して、そういうことじゃないんじゃないかって思うようになりました。
結婚とか離婚とか、家族とか夫婦とか、最終的には動かされるようにして動いていく。理屈じゃなくて縁としかいいようがないものがあるって、今はそう思うんです」(有森・以下「」内同)
2年前の1月、9年にもわたる闘病の末、母・久子さん(享年76)を胃がんで亡くし、今年1月には佐賀県・鹿島市の「松岡神社」で亡くなるまで宮司を務めていた父・正行さん(享年80)を肺がんで亡くした有森。二人は別居していたのだが、離婚はしなかった。父は闘病の母をほとんど見舞いに来ず、最期も看取らなかった。彼女の胸には30年にもわたる両親への葛藤がくすぶっていたが、今は吹っ切れた。
ずっと避けていた父の死からも、新たな縁が生まれた。
「父の葬儀も佐賀で執り行いました。最初は『父が恥ずかしくないよう、やるべきことはやるけれど、さっさと終わらせたい』っていう気持ち、それだけでした。神道も佐賀のしきたりもわからなかったですから」
しかし、そこで父が大切にしていた人生に触れ、新たなつながりが生まれていく。