女優・芦川いづみ(81)をもう一度見たい──2015年秋、東京・神保町シアターで上映された『恋する女優 芦川いづみ』特集がひそかに話題となった。21日間にわたり連日満席の大盛況で、平日朝からファンが押し寄せ、入場を断わることもあったという。そんな異例の事態に、昨年2度もアンコール上映されたが、リクエストの声は今も続く。
「芦川さんの特集は業界内でもあまり例がなく、1回目はお客様の要望に応える形で半信半疑で始めました。でも蓋を開けると、観客動員数は過去10年でトップクラス。1960代を中心にファンが多く、彼女をリアルタイムで見ていないはずの40、50代にも人気です。今見ても古さを感じない身近な美しさが魅力かもしれません」(神保町シアター支配人・佐藤奈穂子氏)
芦川は、1950~1960年代の日活黄金時代に活躍した日活の看板女優だった。活動期間は15年間と短いが、その輝きは今も失われず、多くの“芦川いづみファン”を惹きつける。
1935年生まれの芦川は、1952年に松竹歌劇団に入学すると、翌年『東京マダムと大阪夫人』(川島雄三監督)で銀幕デビューを果たす。1955年に川島監督が日活へ移籍したのをきっかけに、芦川も日活に活動の場を移し、数々の映画を彩った。『陽のあたる坂道』(1958年)、『あした晴れるか』(1960年)、『あいつと私』(1961年)など、石原裕次郎との共演も多い。
しかし、華々しい活躍もつかの間、1968年に32歳で俳優・藤竜也(75)と結婚すると、表舞台からぱたりと姿を消した。