今年でアーティスト活動45周年を迎える谷村新司(68)が、この4月、歌舞伎や文楽など伝統芸能の殿堂・国立劇場でリサイタルを行なった。
開演、花道からの登場だ。谷村が歌いながら花道を歩く。拍手喝采の客席には、胸の前で手を組んでため息を漏らす女性がいる。谷村をじっと見つめ、小さく手を振る人も多い。会場を包み込んでいたのは、谷村の圧倒的な色気であった。
「色気があると言われるのは嬉しいですね(笑い)。僕は大阪の生まれで、家が邦楽一家と言いますか、おふくろは長唄の三味線、姉は地歌舞を教えていたので、常に着物姿の女性が集っていました。
家には馴染みの呉服屋さんがしょっちゅう来ていて、目の前で反物をパーッと広げる。色の海です。好奇心の強い子どもだったので、『おっちゃん、これ何ていう色?』と聞いたりしてね。
親父は親父で、小学生の自分を祇園に連れて行く(笑い)。そういう環境で育ったから、立ち居振る舞いや所作が自然に身についているのではないかな、と思います。歌っている最中も、無意識に『左から振り向いたほうがいいな……』と自然に体が動きます」