放送作家でコラムニストの山田美保子氏が独自の視点で最新芸能ニュースを深掘りする連載「芸能耳年増」。今回は、13日になくなった野際陽子さん(享年81)の、番組スタッフとして見た素顔について。
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02年からレギュラー、特番含め7年間続いた旅番組が『旅の香り』(テレビ朝日系・旧名『旅の香り 時の遊び』)。バラエティー専門放送作家の私にとって、唯一と言っていい、かなり高尚な旅番組。その構成者の末席に入れていただいていた。
同番組のMCとして、スタジオを仕切ったり、ゲストと旅に出てくださっていたのが、13日にお亡くなりになった野際陽子さんだった。
アシスタントは元フジテレビアナウンサーの中井美穂。初代番組プロデューサーのイチオシで抜擢されたのだが、同じくNHKの女子アナ出身だった野際さんと全く異なるタイプ。「大女優(=野際さん)の邪魔をしない」「美人ではなく笑顔がウリなタイプ」といった理由から、「名コンビ」と各所から評価されたものである。
そして、本編の地方ロケと差別化するために用意されたのが、デビュー間もない氷川きよしによる都心の“ぶらり旅”。下町に出向いては、自身のメインターゲットである年配女性と触れあい、どんどん人気を上げて行った氷川。「あのおばあちゃん、かわいい! 僕のタイプです」なる名言は、このコーナーから誕生したものである。
いま思い出しても、予算が少なく、弾けたバラエティー番組が視聴率を獲り始めていたテレ朝局内にあって、なんとなく「肩身の狭い」番組だったのだが、女優・野際陽子がMCゆえ、地方ロケに出てくれる有名俳優や女優が後を絶たなかった。
野際さんと親子役をしたのをきっかけに、同じマンションの別フロアに住んでいたこともある浅野ゆう子や、京都通の羽田美智子は何度、出演してくれたことか。番組後期には、故・地井武男さんも準レギュラーとなり、そこから、あの『ちい散歩』が誕生したのである。
野際さんのナレーションと対比するように起用した男性ナレーターの口調は、後に、さまざまな“ぶらり旅”番組にマネされたものだ。
もともと、アナウンサーでフランス留学の経験まであったとはいえ、野際さんは好奇心の塊のような方であり、ご自分で下調べもなされば、資料を自腹で購入されていた。
視聴率不振の際には、なんと、企画会議に顔を出してくださることもあったのである。しかも、テレビ朝日ではなく、制作会社がある場所まで足を運んでくださったのだ。