「ドラマ調CM」と一口に言っても、まったく別のタイプもあります。上田一シリーズとは対象的と言っていいのが、ドリームジャンボ宝くじのCM。
サムライ姿で現代にタイムスリップした役所広司。チョンマゲに着流し姿が妙にフィット。見るもの聞くものすべてに驚きを隠せないサムライ。大画面の中のド派手な宝塚スターを目撃して、腰を抜かす……。
というこのCM、いったい何を伝えようとしているのか意味がさっぱりわからない。ただただ、非日常のインパクト。役所広司がサムライにしか見えないことにも驚かされる。これも視聴者の「心を動かす」CMとしては成功事例なのでしょう。
ポイントは、見た人の中にしっかりと印象を刻みこむこと。一度見たらじわりと心に染み込み入りこんでくること。必ずしも商品の中味を説明したり名前を連呼せずとも、結果として心を動かすことになれば成功。
宣伝している商品名は思い出せないのに、CMのワンシーンや役者の表情、ふるまいが実に心に残ってしまうCM、あなたの中にもありませんか?
そんなCMが、しかし今の時代、PRとして最強なのだとしたら? 何というパラドックス。ドラマツルギーの不思議な面白さはきっとそこにあるのでしょう。