股関節の痛みを抱えて石部氏のもとを訪れた61歳男性・Aさんは、50代になって腰から脚のつけ根にかけて痛みを感じ始めたという。
はじめは「立ち上がる時に痛みを感じる」程度だったため放置していたが、次第に痛みは増し、定年を迎えた頃には歩くのも辛い状態になっていた。こうなると、いくら“適度なウォーキングが体にいい”とわかっていても実践できない。
Aさんに下された診断は「変形性股関節症」だった。
「股関節は骨盤の両側にある臼状のくぼみ(臼蓋)に大腿骨の球状の先端(大腿骨頭)がはまりこんでいて、それぞれの骨の軟骨が潤滑油の役割を担っています。ところが、加齢などで軟骨がすり減ると、骨同士が接触して、痛みが生じる。これが変形性股関節症です。放置して重症化すると完全に歩けなくなることもある」
日常生活を送るなかで、股関節に負荷が蓄積されるのは避けようがない。
「だからこそ、立ったり座ったり、歩いたりといったひとつずつの動作で、少しでも負荷をかけないように意識することが、老いても“健脚”を維持するために必要なことなのです」