それらは自慢に値する自慢話だが、背景となった高度経済成長時代とともに明るい印象をともなう。山崎正和といえば「保守」と答えがちだが、私はこの本で典型的「リベラル」の生涯を実感した。
『舞台をまわす、舞台がまわる』の刊行は、実はインタビュー終了十年後である。編者・御厨貴は、この「語り」は山崎氏にとって「扱いにくい産物」で、「あなた方(御厨貴らチーム)の作品」と距離を置いたからゲラの手入れが遅れたと見る。その距離感を溶かすのに十年かけたとは、やはり著者のスケールは大きい。
※週刊ポスト2017年8月11日号