8月11日は山の日。山といえばアウトドアブームの一方で遭難事故が増加傾向にあり、国土交通省の発表によれば、2016年の山岳遭難は発生件数2495件、遭難者は2929人。発生件数、遭難者数は、統計の残る昭和36年以降、前年に次いで過去2番目に高い数値を示している。1988年までは発生件数は年間おおよそ500件前後で推移していたが、その後は歯止めがかからず、この30年で5倍にも増えた計算になる。遭難者数も同様で、約4倍の増加だ。
年齢層別では、遭難者のうち40歳以上が2269人と77.5%で、このうち60歳以上が1482人。また、死者・行方不明者では、40歳以上が289人と90.6%、このうち60歳以上が215人を占めている。
そのなかでも、目立つのは単独登山(山菜・茸採り、観光等も含む)における死者・行方不明者数。これは184人で、単独遭難者の18.6%を占めており、2人以上の複数登山における遭難者のうち死者・行方不明者が占める割合(7.0%)と比較するとかなり大きい割合であることがわかる。
また発生件数の76.4%が遭難現場から通信手段を使用して救助を要請しており、今後も携帯電話による救助要請の増加が予想されるが、多くの山岳では通話エリアが限られることやバッテリーの残量に注意も必要だ。
◆周囲が登山者の行動を遠隔把握
山についての理解の促進や、自主的な安全性の確保がますます重要視されるなか、8日、博報堂アイ・スタジオは、山岳遭難事故の減少を目指す IoT(モノのインターネット) デバイスを活用した登山インフラ『TREK TRACK』 を発表した。8月18 日にローンチを行い、9月1日より山梨県北杜市の瑞牆(みずがき)山にて一般登山者への開放を行う。
『TREK TRACK』は、長距離無線の LPWA(LowPowerWideArea)による独自の登山インフラを山岳地帯に構築し、登山者の行動データを家族や関係者、山岳管理者がパソコンやアプリで確認できるというシステム。
登山者が専用デバイスの電源を入れて携行するだけで、携帯圏外エリアでも数分に一度、自動的にGPSデータがサーバーに送られ、集中管理される。データはWebサイトや専用アプリで確認することが可能。また、個人だけでなく山中のどこにどれだけの人がいるかも把握できるという。専用デバイスは必要なときだけレンタルすることができ、自宅で受け取ってポストで返送可能。
同事業統括担当の川崎順平氏は、「LPWAは、簡単にいうと、長距離・低電力のBluetoothのようなものです。GPSデータのみを送信し、画像やテキストは送れません」と説明する。
「ソーラーバッテリー駆動になるため、電気の通っていない山小屋にも設置することができます。数分に一回データをとっているので、電池が切れたとしても最後どこにいたかということだけでもわかります。実証実験は昨年から開始し、スキーやスノーボードなど、徒歩より早い速度での移動にも対応。3メートルの雪に埋まった状態でも通常時と変わらない電波の送受信ができました」(川崎氏)