著者は、そのことを、じつに的確な言葉で説明してくれる。メルドーは原初的衝動へふみだすことなく、ジャズの内側でたえている。そして、半歩前へにじりでて、その枠組みを内側からひろげてきたという。はしょった要約だが。
ただ、たくさんの音源に接してきたというだけではない。著者は、それらを考えぬいている。妥当な言葉をひろいだすために、神経をとぎすませてきた。ソロ・ピアノの、どこか空疎なかがやきについても、得心がいったしだいである。そう言えば、著者は青柳いづみこの文業にも、一目おいているという。そこからも、書き手としての志をおしはかってほしい。
※週刊ポスト2017年9月22日号