相撲ブームが沸騰している。「謎のスー女」こと相撲女子の尾崎しのぶ氏が、現在相撲コラムを週刊ポストで執筆中。今回は悪性リンパ腫により37歳で旅立った時天空について尾崎氏が綴る。
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今年も大盛況だった夏巡業「大相撲KITTE場所」。東京駅丸の内南口を出たところにある、日本郵便が経営する商業ビルKITTE(東京中央郵便局)で開催される興行で、初開催は、二〇一五年八月二十九日だった。土俵近くの観覧席への入場にはKITTE内ショップで買い物・応募し、抽選に当選して得たチケットが要るが、吹き抜けの構造なので会場のアトリウムを二階から五階の通路より見下ろせる、はずだったのだが……。
抽選にはずれた私が十一時過ぎに行くと、通路にはすでに人垣ができていて大にぎわい。自分のとろさにがっかりする。相撲人気をなめていた。すき間をさがして二階から五階をドタバタ走り回るが、ない。あきらめて、会場をのぞめない六階のレストランフロアの椅子に座っていた。そこでまさかの、力士との一番の接近があった。
お腹の大きい女性と、四歳か五歳に見える少年がいた。「あ、ママ! あの人だ!」と少年はさけび、母親にぶつかっていった。突進の後、母親の脚にグイグイ脚をからめている。身重のお母さんになんてことしてるんだ。心配に及ばず、母は強し。少年の相撲遊びには付き合い慣れているらしく、どっしりと立っている。
そこに、出番を前にレストランで昼食を摂っていたのだろう「あの人」が歩み寄ってきた。そして少年の目の高さまでかがんで、肩を撫でながら言った。