相撲ブームが沸騰している。「謎のスー女」こと相撲女子の尾崎しのぶ氏が、相撲コラムを週刊ポストで執筆中。今回は、一人横綱となった九月場所で見事に優勝した日馬富士について尾崎氏が綴る。
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銀座・日動画廊に日馬富士の絵画展を見に行った。山の絵が多かった。夜半の深い青だったり、日の出の瞬間の赤だったり。九月の日馬富士の心は何色だったのだろう。
猛烈な相撲人気の中心である稀勢の里が怪我に倒れ、白鵬が復活した五月、七月場所について八角理事長は「四人いても実質は一人横綱」と発言した。日馬富士は十一勝していて、横綱としての責任は果たしているのではないか。
八角理事長はひどいことを言うものだな、と思ったが、優勝した白鵬を評価するのは仕方ないのか、とも思った。その「一人横綱」のタスキが九月場所、白鵬の休場により日馬富士の胴体に飛んできて仰天してしまった。
七月場所の宇良戦。日馬富士は低い立ち合いから突き放そうとしたのだが、さらに低く立った宇良に右腕を手繰られ敗れた。鋭さと低さ、二つの点で完全に株を奪われてしまった。しかし、若手の挑戦から逃げることなく堂々と受けて立った日馬富士は立派だと思った。気高く潔く、美学が見える。やはり「内容はさておき勝つ事が大事」という横綱の方がいいとは思えない。
入門して間もないころ、安治川部屋のみんなで海に行った。そこで安馬(現日馬富士)は溺れかけたのだそうだ。周囲からの「泳げないんだったら無理するな」との声を無視しまた海に入り溺れかけ、を繰り返したという。