相撲ブームが沸騰している。「謎のスー女」こと相撲女子の尾崎しのぶ氏が、相撲コラムを週刊ポストで執筆中。今回は、九月場所で敢闘賞を受賞した朝乃山について尾崎氏が綴る。
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「そうなったら日曜は早じまいします。好きな時に休んで何が悪いんですか。誰が僕をとがめるっていうんですか」
九月二十二日の夜、友人Hからそう電話がかかってきた。バーを経営しているHはとても真面目な人で、足を骨折しても店に立ち続けた。だからこんな乱暴な物言いはHらしくないのだが、理由があるのだ。
朝乃山が優勝したならその晴れ姿を是非とも見に行かなければならない。国技館前で優勝パレードを見るか、それとも高砂部屋の前ではりこむべきか悩んでいるとのこと。
富山出身のHは、今年三月石橋改め朝乃山が一九八四年の琴ケ梅以来三十三年ぶりの(富山出身者として)十両昇進をした時、涙を浮かべつつも「琴ケ梅は八尾町の小学校(教師の中には柴田理恵の親がいた)の大先輩として特別な思いがある。呉羽町の朝乃山はそれには劣るが贅沢は言わないでおこう」と強がっていた。
しかし三場所で十両を通過し駒不動以来二十八年ぶりの幕内昇進には素直にガッツポーズをせざるを得ない様子。私は青森出身で同郷の力士がたっぷりいて、Hのような感動を持てない。だから力士を生む土地としての富山の不毛さを、逆にうらやましく思った。