推定患者数が24万人を超えるとされる「味覚障害」。本誌・週刊ポストでは自覚症状が乏しいこの病の恐怖をレポートしてきたが、さらにその体験者たちの声に耳を傾けると、苦悩の深さが、改めて浮き彫りになった。
「味を感じなくなる味覚障害もあるけど、僕は正反対で刺激に対して敏感になりすぎた。大好きなお寿司もワサビの刺激に耐えられず、口にできなくなりました」
そう語るのは漫才師のオール巨人(65)。7年前に行なったC型肝炎のインターフェロン治療の影響で味覚障害を発症した。
「薬の副作用で味覚がおかしくなった。口の粘膜が弱ったのか、キムチやもつ鍋のように味が濃くて刺激が強いものを口に入れると、とにかく熱くて痛みを感じる。熱いお茶も一切飲めなくなりました」
オール巨人にとって、好物を食べられない日々は「つらい」の一言だった。
「口にできたのは、薄い出汁のうどんやお粥だけ。お酒も絶対にダメ。大好物のお寿司をどうしても食べたい時は、子供用のワサビ抜きパック寿司を食べました」
闘病と、味覚障害によって食べられないものが増えた影響で体重は10kg減り、階段を5段上がるとフラフラした。嗅覚まで過敏になり、食べ物の匂いだけでひどい胸やけを起こしたこともあったという。