介護業界では、近年、倒産や休廃業が急増している。東京商工リサーチによれば、2016年には老人福祉・介護事業の倒産件数は108件にのぼり、過去最多を更新した。倒産の原因には、介護報酬のマイナス改定や、資金調達力に劣る新規事業者の参入などが挙げられている。倒産の業種では訪問介護がもっとも多いが、有料老人ホームも例外ではない。
今年7月14日には、札幌市を中心にグループホームや有料老人ホームなど23施設(居室数1600以上)を運営していた介護事業者「ほくおうサービス」(札幌)などグループ5社が、札幌地裁へ自己破産を申請した。
同社の全23施設は、福岡に本社を置く創生事業団が運営を引き継ぐとしていたが、8施設に関しては家賃交渉がまとまらなかったため、事業を継承しない方針を発表した。
その8つの老人ホームに入居していたのは約340人。幸い、破産申請から約3か月が経ち、ほとんどの人に転居等の見通しが立ったというが、当然ながら、転居先が見つからないケースも出てくる。
『「老人ホーム大倒産時代」の備え方』の著者で経営コンサルタントの濱田孝一氏はこんな例を挙げる。
「2007年に秋田の介護施設が倒産したときは、入居者を近隣の複数の施設が引き受けたのですが、もともとは夫婦2人で同じところに入っていたのに、別々の施設に移らなければならなくなった事例もありました」
体の弱っている高齢者の場合、急激な環境の変化によって体調を悪化させてしまうこともあるという。
そうした悲劇を避けるために、入居している施設の“経営危機”の予兆を察知することはできないのか。介護雑誌『あいらいふ』の佐藤恒伯編集長はこういう。