ここのところヒット作が続いていた朝ドラだが、今作はどうか。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。
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「笑ってください」という意味のタイトルを掲げたNHK 朝ドラ『わろてんか』もスタートから約1か月。開始当初、このドラマの見所や期待について触れたのですが、残念ながらしばし時が経過して……『わろてんか』が笑えない。なぜなのでしょう? その理由を5つ挙げてみると……。
【1】主人公の二人の関係が見えない
ヒロインのてん(葵わかな)と藤吉(松坂桃李)。想いを寄せ合い周囲の反対にもめげずに結婚しよう、と駆け落ち同然で家を出たカップル。大恋愛のはずなのに、どうしてもそのような関係に見えてこないのです。互いに見つめ合っても、相手に対する「情」の交流が伝わってこないのです。
ヒロインの葵さんはいつも口角をあげて固まった「笑顔」。その他に表情の変化がない。新人だから仕方ないのかもしれない。一方、松坂桃李さん演じる藤吉の方も、感情が見えない。いったいなぜ、そこまでてんに惚れるのか惹かれるのか、肝心なところが伝わってこない。松坂さんのてんに対するふるまいは、まるで妹に対する兄みたい。相手が女義太夫のリリコなら、まだ恋愛感情も理解できるのですが……。
重要な二人の関係がきちんと浮き上がってこないからその他のこともイキイキと伝わってこない、ということなのでしょうか。
【2】「笑い」は結果のはず。なのに……
面白いことを見て、つい笑いが出てしまう。クスッと笑みがこぼれてしまう。爆笑してしまったりする。ということは、しょっちゅうあります。しかし最初から「笑いとは」みたいな話をされても、白けるばかり。
この朝ドラでは「笑い」についてよく話題にします。「笑いは人を救う力がある」とか「一生笑わせることを約束した」的な話が多く、そのわりに、笑いを誘うシーンがあまりに少ないのでは。
もちろん、何とか視聴者を笑わそうとしているのでしょう。不良品のパーマ機を使ったら髪の毛が焦げたり、おばちゃんを無理矢理おねえさんと言い換えさせたり。刃物振り回してのチャンバラごっことか。今どき小学生でも笑わないレベル。これでは大人はちっとも笑えません。