映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、新曲『煙がめにしみる』が発売中の役者兼歌手、中条きよしが“流し目”の動きと着物の着方について話した言葉を紹介する。
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中条きよしは役者兼歌手として、数多くの舞台で座長を長年にわたって務めてきた。
「僕が運の良かったのは、座長でしたから舞台で主演ができたことです。座長をずっとやってきた人と脇しかやっていない人とでは、見える景色が違います。
座長って、そんなに自分で動かなくとも周りが動いてくれる。その動いている様を座長は見ることができるんですよ。つまり、人の芝居を見ることができる。『あ、こういう風に動いてくれるんだ』って。脇から座長の動きを見ても何も分かりません。かつて映画でしか見たことない人たちの芝居もゆったり見られる。顔色一つまでね。それが、とても勉強になりました。
それから、座長は舞台で一番上にいます。そこまで行った人は上の気持ちも分かりますし、下の人の気持ちも分かります。でも、下にいるままだったら上の人のことは分からないんですよね。『威張ってるんだろうな』『いい気持ちでいるんだろうな』って想像するしかありませんから。ですから、初めて座長をさせていただいた時から全て吸収しようと思っていました」
座長をしながら身につけたことの一つに、流し目の動きがあったという。観客を色気で酔わせる、見せ場の一つだ。