「I am not ABE」「戦争法案」「自民党、感じ悪いよね」「とりま、廃案」など反政権の言葉が続き、安倍氏の暴言である「早く質問しろよ」も入り、「存立危機事態」「駆けつけ警護」「国民の理解が深まっていない」など安保法案に関するものも選ばれた。
2016年は「保育園落ちた日本死ね」を山尾志桜里氏が受賞。この時も「日本死ね、とはなにごとだ!」と右派が激怒し、主催であるユーキャンは「反日企業」認定された。イメージを上げるための活動でこうなってはたまったものではない。
流行語大賞のノミネート語は読者アンケートを基に「現代用語の基礎知識」編集部が選ぶので、もしかしたらアンケートに含まれてもいないのかもしれないが、豊田真由子元議員の「ちーがーうーだーろー!」が入っているにもかかわらず、子供達の間でも流行語となった「このハゲー!」は「排除」。ここには自民党の不倫疑惑議員・今井絵理子氏で知られる「一線を越えない」配慮があったのかと邪推してしまうのである。
今年の言葉で反政権色のあるものは「忖度」だが、これの大元となった「モリカケ問題」や「総理のご意向」「お友達」「アッキード事件」は入っていない。メディアに多数報じられたといえば、都議選最終日の秋葉原での街頭演説における「アベ辞めろ」「こんな人たちに負けるわけにはいかない」だが、これらも以前であれば入っていてもおかしくない。
昨年までの政権批判的な論調が影を潜めた今年のノミネート語の数々。これこそ「忖度」なので今年は「忖度」に大賞をあげ、選考委員も「様々な忖度の結果選ばれました」とスピーチしちゃえば?
●なかがわ・じゅんいちろう/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』など
※週刊ポスト2017年12月1日号