スーパーやショッピングモール、コンビニ、ドラッグストアと多岐にわたる事業領域で拡大を続ける巨大流通グループのイオンが、いま経営戦略の大転換を迫られている。
12月12日に発表した中期経営計画によると、グループ売上高は現在(2017年2月期)の8兆2102億円から2020年度に2割増の10兆円まで伸ばすと宣言。だが、内情をみると、決して楽な目標ではない。
「イオンリテールを中心とする総合スーパー(GMS)や傘下に収めたダイエーが入る食品スーパーが不振続きで、金融事業や不動産など小売り以外のビジネスで何とか利益を確保している状況」(経済誌記者)だからだ。
そこで、イオンがグループの総力を挙げて取り組もうとしているのが、業界の中でも遅れを取っていると度々指摘されてきた「デジタルシフト」だ。先の中期経営計画でも、今後3年間でこれまでの2.5倍もの5000億円を投資する計画をぶち上げた。
流通アナリストでプリモリサーチジャパン代表の鈴木孝之氏がいう。
「小売業における設備投資の行き先といえば、普通は物理的な店舗が中心となりますが、食品をはじめとするネット通販の台頭によって、もはやリアル店舗だけに投資するのは賢明ではない時代。
特にイオンは以前からネット事業の強化が課題でしたので、ここで一気にIT分野やネット通販に絡む物流・配送センターなどを整備して巻き返しを図ろうと考えているのです。
すでにイオンはグループ内に多くのネット通販サイトを持ち、EC事業のベースはありますが、今後は独自の巨大ネットモールを築き、地方で繋がりのある農業生産法人の産直商品を扱ったり、全国のスタートアップ企業が提供するサービスをネットビジネスに結び付けたりするなど、さまざまな展開を考えているようです」
イオンが巨額のデジタル投資を決断したのには、もうひとつ大きな理由がある。米・アマゾン・ドット・コムによるネット販売に本業を奪われないための防御策である。岡田元也社長もアマゾンを名指しし、〈小売業が気付いていないことを教えてくれた。彼らのやっていることに追い付かなければ〉とコメントしている。
前述の鈴木氏は「アマゾンは日本のすべての小売業の脅威になりつつある」と指摘し、こう語る。