ライフ

【著者に訊け】星野智幸氏 相撲への無自覚な差別が怖い

『のこった もう、相撲ファンを引退しない』著者・星野智幸氏

【著者に訊け】星野智幸氏/『のこった もう、相撲ファンを引退しない』/ころから/1600円+税

 目の前の事象に目を凝らすことで、世の中の構造や行く末さえ看破してしまう能力者がごく稀に存在する。例えば作家・星野智幸氏だ。〈スポーツとは、社会の深層で起こっていることを、社会よりも少し早く先取りする場〉と書く彼にとって、大相撲もその一つ。中でも観客らが必要以上に日本人力士に肩入れする、〈日本人ファースト〉を問題視する。

 確かにヘイトスピーチやネトウヨの存在も問題だが、〈問題は、そのような人たちの暴力的な言葉に対して、一般社会が多少眉をひそめつつも無関心な態度を取り続け〉〈差別が大手を振ってまかり通るようになってしまったこと〉。

 特にスポーツなどの非日常的局面では〈不作為的差別から積極的差別への転換〉が起きやすく、日本人が日本人を応援しても誰も疑問を抱かない。表題はその名も、『のこった』──。土俵際寸前まで追いつめられているのは、果たして力士か私たちか?

 子供の頃から力士に憧れ、初めて投稿した作品も相撲小説だった(!)という純文学作家に会おうとした矢先、とんでもない事件が起きた。当時の現役横綱・日馬富士による貴ノ岩暴行事件とその後の引退劇である。

「まだ全容が解明されていませんが、僕は両力士のファンなので、寝込みそうなぐらいショックです。横綱時代に僕の人生まで託した貴乃花親方には今は不信感が募るばかりだし、相撲協会は、ちゃんとファンや力士のことを考えた明快な対応ができていないし、苦しくて仕方ないです」

 本書では19年ぶりの日本人横綱誕生に沸いた2016~2017年のブログやエッセイの他、著書『スー女のみかた』もある和田靜香氏との対談や、相撲小説「智の国」を収め、自身愛してやまない相撲の魅力やファンの変化についても、その筆は冴える。

関連記事

トピックス

山口組分裂抗争が終結に向けて大きく動いた。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
「うっすら笑みを浮かべる司忍組長」山口組分裂抗争“終結宣言”の前に…六代目山口組が機関紙「創立110周年」をお祝いで大幅リニューアル「歴代組長をカラー写真に」「金ピカ装丁」の“狙い”
NEWSポストセブン
「衆参W(ダブル)選挙」後の政局を予測(石破茂・首相/時事通信フォト)
【政界再編シミュレーション】今夏衆参ダブル選挙なら「自公参院過半数割れ、衆院は190~200議席」 石破首相は退陣で、自民は「連立相手を選ぶための総裁選」へ
週刊ポスト
Tarou「中学校行かない宣言」に関する親の思いとは(本人Xより)
《小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」》両親が明かす“子育ての方針”「配信やゲームで得られる失敗経験が重要」稼いだお金は「個人会社で運営」
NEWSポストセブン
中居正広氏と報告書に記載のあったホテルの「間取り」
中居正広氏と「タレントU」が女性アナらと4人で過ごした“38万円スイートルーム”は「男女2人きりになりやすいチョイス」
NEWSポストセブン
『月曜から夜ふかし』不適切編集の余波も(マツコ・デラックス/時事通信フォト)
『月曜から夜ふかし』不適切編集の余波、バカリズム脚本ドラマ『ホットスポット』配信&DVDへの影響はあるのか 日本テレビは「様々なご意見を頂戴しています」と回答
週刊ポスト
大谷翔平が新型バットを握る日はあるのか(Getty Images)
「MLBを破壊する」新型“魚雷バット”で最も恩恵を受けるのは中距離バッター 大谷翔平は“超長尺バット”で独自路線を貫くかどうかの分かれ道
週刊ポスト
もし石破政権が「衆参W(ダブル)選挙」に打って出たら…(時事通信フォト)
永田町で囁かれる7月の「衆参ダブル選挙」 参院選詳細シミュレーションでは自公惨敗で参院過半数割れの可能性、国民民主大躍進で与野党逆転へ
週刊ポスト
約6年ぶりに開催された宮中晩餐会に参加された愛子さま(時事通信)
《ティアラ着用せず》愛子さま、初めての宮中晩餐会を海外一部メディアが「物足りない初舞台」と指摘した理由
NEWSポストセブン
「フォートナイト」世界大会出場を目指すYouTuber・Tarou(本人Xより)
小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」に批判の声も…筑駒→東大出身の父親が考える「息子の将来設計」
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《妊娠中の真美子さんがスイートルーム室内で観戦》大谷翔平、特別な日に「奇跡のサヨナラHR」で感情爆発 妻のために用意していた「特別契約」の内容
NEWSポストセブン
沖縄・旭琉會の挨拶を受けた司忍組長
《雨に濡れた司忍組長》極秘外交に臨む六代目山口組 沖縄・旭琉會との会談で見せていた笑顔 分裂抗争は“風雲急を告げる”事態に
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 中居トラブル被害女性がフジに悲痛告白ほか
「週刊ポスト」本日発売! 中居トラブル被害女性がフジに悲痛告白ほか
NEWSポストセブン