正月の風物詩とも言える関東大学駅伝No.1決定戦である箱根駅伝。しかし、箱根駅伝で活躍した選手は、大学卒業後に輝きを失ってしまうケースが多く、早々と引退してしまうことも少なくない。
その背景には、箱根駅伝の注目度の高さがあるという。つまり、箱根駅伝で活躍すると、多くのメディアに取り上げられ、スポンサーからの用具提供やファンからのプレゼントも増える。そういったなかで箱根駅伝がすべてだと考え、そこで燃え尽きてしまうランナーがいるというのだ。
その一方で、少子化で大学経営が圧迫される中、箱根駅伝を生き残りの戦略として活用する大学が増加しているのも箱根のスターが大成できない一因となっている。
「受験シーズン直前に行われる箱根駅伝は大学にとって、大学の名前を売る最大のチャンスです。箱根で活躍して受験生を集める。そのために箱根駅伝を重視した強化策が取られることがあります」(陸上関係者)
さらにスポーツジャーナリストの酒井政人氏は「箱根駅伝とマラソンには大きな違いがある」と言う。
「20kmの駅伝と40kmのマラソンでは、同じ長距離種目でもまったく違うスポーツといえます。箱根のスターは、大学時代に20kmを走る体づくりをメインにしてしまうので、卒業後マラソンへの移行が難しいのです」
法政大時代、トレードマークのサングラスからビジュアル系ランナーとして注目を浴びた徳本一善氏(現・駿河台大駅伝部監督)が言う。
「多くの箱根のスターは1万mが適性距離の選手が多い。それでも日本では圧倒的に注目度が高いため、選手はマラソンに挑戦するのです。またファンも“箱根のスター=マラソン”という先入観を持っています。しかし、選手の適性というものがある。すべての箱根駅伝のスターがマラソンの適性があるとは限りません。(“箱根史上最高のランナー”との呼び声高い)渡辺康幸さん(早大出身・現住友電工陸上競技部監督)も、得意種目は1万mだと思います。けがというのもありますが、1万mという種目を突き詰めれば世界で良い成績を残せたと思います」