【書評】『バブル入社組の憂鬱』/相原孝夫・著/日経プレミアシリーズ/850円+税
【評者】香山リカ(精神科医)
「バブル世代」とは、バブル期に社会人になったいま40代後半から50代にかけての人たちを指す。50代後半の私もギリギリその仲間に入れてもらえるだろう。ある世代をひとくくりにして論じる世代論には批判もあるが、著者は「世代の共通性というものも確実に存在」すると言う。とくにバブル世代には、みな同じテレビドラマを見て同じクルマを欲しがったなど、とくに強い共通性がありそうだ。
著者はバブル世代に対し「職場のお荷物なのに、給料は高い」と手厳しい。いつまでも自分のことにしか関心がない「子ども社員」が多く、自己認識が甘くて堅実さや慎重さに欠ける。入社した頃の年功序列の記憶が消えないので、「上司が年下」などという現実を受け入れられず、いらいらしてパワハラに走ることもある……。いずれも耳が痛いが、これではお荷物どころか会社から「早く消えて」と思われてもおかしくない。
しかし著者は、そんなバブル世代の4つの特徴は、うまく使えば武器にもなると教える。4つとは「コミュニケーション能力が高い」「『根拠なき自信』がある」「会社への依存心が強い」「見栄を張りたがる」だが、コミュニケーション能力を生かして部門間の調整役に、自信を生かして新しい環境への適応力に、依存心を愛社精神に、と転じることも可能らしい。