だが最近NHK総合やNHK BS中心に、ノーナレーションによる番組が数々登場している。そのラインナップは主にドキュメンタリーが多い。
昨年8月、BS-1では『ノーナレーション・ドキュメンタリーの世界 「光棍児(こうこんじ)中国の結婚できない男たち」』が放送。これは一人っ子政策で男女のバランスが大きく崩れた中国で、現地では光棍児と呼ばれる独身男性たちが、露骨な要求を突きつける女たちの狭間で揺れ動く心模様を描いたもの。ナレーションがないことによって男女の本音と建前がダイレクトに伝わり、心に残った番組であった。
さらには『ノーナレ』という番組も度々放送されている。現役時代の加藤一二三・九段に密着したり、47歳にして未だにプロボクサーを続ける辰吉丈一郎と、夫の世界王者への返り咲きを信じる妻の愛の形を描いたり、冬の日本海で、借金返済や高級車購入など、さまざまな目的と過去を背負った男たちが漁船に乗り込み、高級食材である松葉がにを捕る生活を、ナレーションがない状態で追跡している。
◆過剰説明へのアレルギーか
上記に挙げた番組は、ドキュメンタリーにはナレーションがつきものという常識を覆し、登場人物の表情や彼らが出向く場所なども、撮ったままを映し出しているのだ。状況を説明するテロップも少なく、無音の時間が続くこともある。その「むき出し」な感じが、時に説明過多で辟易することも多いテレビ番組の中にあって、「考えさせる」余白を作り出す。
もちろんナレーションがないと物足りない、寂しいといった感情が生まれることも事実だが、You Tubeなどで一般人の投稿動画を目にする機会が増えているだけに、今後も意外と抵抗なく受け入れられていくのだろう。ノーナレのプログラムから新しいヒット番組が生まれる可能性もある。今後に大いに期待したい。 (芸能ライター・飯山みつる)