「ストレス」というと、これまではバリバリ働く現役世代のイメージが強かったが、最近ではリタイア世代特有の「加齢性ストレス」に注目が集まっている。
国立がん研究センターが1月20日に発表したデータは40~69歳が対象で、ストレスによるがん罹患リスクの上昇が注目を集めた。さらに65歳以上だけを対象にした別の調査では、驚くべき結果が出ている。
東京医科歯科大学が昨年3月に発表した調査では、ひとり暮らしで食事をとる“孤食”をしているシニア男性は、誰かと同居して一緒に食事をしている男性よりも死亡リスクが1.2倍高かった。
興味深いのは、同居していても家族との生活時間が合わないなど何らかの理由で1人で食事している“家庭内孤食”をしている男性は、なんと1.5倍も死亡リスクが高かったのである。つまり家庭の中の孤独は、ひとり暮らしの孤独よりも辛いというのだ。
妻に先立たれて息子家族と同居している太田吾郎さん(70・仮名)は、“家庭内孤食”の寂しさをこう語る。
「食事はいつも自分の部屋で食べています。息子の嫁は“足が悪いから、リビングまで食べに来るのは大変でしょう”と言ってくれるけど、家族がいるのにひとりっていうのは寂しいものですよ。“俺が一緒だと家族団欒のジャマなのか”なんて考えてしまう。ひとり暮らしだったら、諦めもつくんだろうけど……」
東京医科歯科大学の調査でも、65歳以上の女性では死亡リスクに明らかな差が出なかった。男性のほうが「加齢性ストレス」の影響で病気になりやすいといえそうだ。在宅訪問診療を行なっている「やまと在宅診療所大崎」院長で老年科医の大蔵暢氏が言う。