「高齢者になればなるほどストレスは増加します。ひとつは老いによる外見の変化。シワが増えたり、白髪が多くなったり、髪が抜けることがストレスになる。友人や親類の死、社会から切り離された疎外感、収入がないことや医療費がかさむことによる生活への不安など、年齢を重ねるにつれて要因が増え、ストレスが増加していく。引退したら悠々自適な生活が待っていると思っていたが、老いによるさまざまな喪失を経験していくうちに、生活のひとつひとつがストレスに変わっていくのです」
認知症への不安もまた、シニアにとって大きなストレス要因のひとつだ。沢口仁志さん(66・仮名)は、妻の介護がストレスとなり、心不全になってしまった。
「もともと高血圧の持病がありましたが、昨年の夏頃から徐々に食事が進まなくなり、少し歩くだけで動悸や息切れがするようになった。そして昨年の末、就寝前に突然、呼吸困難に陥り、救急車で病院に担ぎ込まれたんです。医師には『ストレスを原因とする高血圧性心不全でしょう。搬送が遅れていたら危なかった』と言われ、そのまま緊急入院となりました」
沢口さんには思い当たるフシがあった。
「異常を感じ始める1か月前に、同い年の妻が認知症と診断されたんです。ごく初期の段階で、とくに煩わしい介護の必要もなかったのですが、家をバリアフリーにしたり、ゆくゆくは妻を施設に入所させる費用など、お金のことを考え始めると気が滅入ってしまっていました」
※週刊ポスト2018年2月9日号