すべての考え方が論理的で、言葉に説得力がある。そんな新チームの方針や戦略、球団改革にかける考えをオフにメディアで目にし「今年はいけるんじゃないか」と感じたロッテファンが多くいるのではないだろうか。
ファンだけではない。球団広報の梶原紀章氏によると、ある日のミーティングが終わった直後、若手選手の一人が「僕たち……秋には優勝しますよね」とつぶやいたことがあったという。
マリーンズは昨年、54勝87敗2分でパ・リーグ最下位に沈んだ。ドラフト以外には目立った補強もしていない。今季は不利な戦いを強いられると予測するのが妥当だろう。そんな状況でも「何かやってくれそうだ」と思えてしまう。井口監督の言葉には、聞いた者をその気にさせる力があるのだ。
言葉の説得力……その理由は具体性にあった。たとえば、「足を使った野球」を目指す今季は、チーム盗塁数140の目標を掲げた。昨年が78盗塁なので、かなり高い目標設定だ。ただ彼は選手に「1シーズンで140盗塁しよう」とは言わない。「1試合に1盗塁すればいい」と説いて、「それならできる」と思わせるのだ。
もちろんその言葉の数々が、監督未経験者による理想論であることは事実だろう。それは本人も承知している。
「いずれ選手時代とは違った壁に当たるでしょう。確かに目標として『優勝する』と言っています。ただ、そんな簡単にできることとも思っていない。改革は徐々に、段階的に確実にやっていかないと。優勝するのが最大の目標であり、そこに向かって突き進んでいきますが、もし1年でポンと勝ってしまったら、違う方向に行ってしまうのではないかという気もする。地道に積み重ねていくことが大事なんです」