井口監督は真面目で爽やかといったイメージを抱かれやすい。もちろんそれは間違いではないが、長年取材してきた立場から言わせてもらうと、彼には勝負師としてのしたたかさがある。なにしろ現役時代、あのイチローから隠し球でアウトを奪った男なのだ。理想論だけを掲げ、玉砕するタイプではない。必ず勝算を練っている。
「ファンの方に、僕らがどういうビジョンでチーム作りをしているのか、しっかり理解してもらった上で戦っていけたらいいですね」
千葉ロッテマリーンズは、これから大きな変革を遂げていくだろう。その最初のシーズンが始まろうとしている。
●いぐち・ただひと/1974年、東京都生まれ。青山学院大時代には東都大学リーグ史上唯一の三冠王となるなど活躍(通算24本塁打は現在もリーグ記録)、4年時にはアトランタ五輪野球日本代表として銀メダルを獲得した。1996年、ドラフト1位でダイエーに入団(逆指名)。プロ初出場試合で満塁本塁打を放つ鮮烈なデビューを飾り、その後も中心打者としてプレー、2003年の日本一に貢献した。2005年にMLBホワイトソックスへ移籍。いきなりワールドシリーズを制し、日本人で初めて日本シリーズとワールドシリーズを制覇した選手となった。フィリーズ、パドレスを経て2009年にロッテへ移籍。2010年には日本一に貢献する。2017年で現役を引退し、ロッテ監督に就任。生涯成績はプロ野球が打率2割7分、251本塁打、1017打点(1915試合)。メジャーでは打率2割6分8厘、44本塁打、205打点(493試合)。
◆撮影/藤岡雅樹、取材・文/田中周治
※週刊ポスト2018年3月9日号