ドラマや映画の定番ジャンルのひとつ、時代劇。ここ最近、その傾向にある変化が見られるという。時代劇評論家でコラムニストのペリー荻野さんが解説する。
* * *
公開中の映画『曇天に笑う』。アニメや舞台化もされた人気漫画の実写化ということで、さっそくチェックしてきた。
時は明治維新後。300年に一度、曇天に現れるという破壊神「オロチ(大蛇)」をめぐって、長年、町を守ってきた曇三兄弟(福士蒼汰、中山優馬、若山燿人)が、オロチパワーで政府転覆を狙う風魔一族らと戦う。そこに岩倉具視(東山紀之)肝いりの精鋭部隊五人組もからんで、クライマックスは大激闘に。福士蒼汰はじめ、桐山漣、古川雄輝、大東俊介らが暴れる暴れる。『踊る大捜査線』の本広克行監督によるハイスピードのチャンバラアクションに仕上がっている。
この作品を見て私が思ったのは、最近は明治を舞台にした「ノーちょんまげ時代劇」が多いということ。近年では佐藤健の『るろうに剣心』シリーズ、小栗旬の『銀魂』などがその代表だ。実際、『曇天に笑う』の予告編でも『銀魂』の坂田銀時、『るろうに剣心』の緋村剣心と同じ時代、もうひとりのヒーローがいたと、曇天火のことを紹介。銀時、剣心ファンにもしっかりアピールしている。
ノーちょんまげ三作品に共通しているのは、とにかく主役が二枚目でお茶目なこと。曇天火は「ここじゃ俺が掟だ!」と町を守り抜くかっこいい男かと思ったら、「なんつって」とにやにや顔に。思えば、剣心も剣の腕はすごいが世間知らずの純情男だったし、銀時にいたっては「宇宙一バカな侍」なんてことを言われている。その一方で、彼らにはそれぞれ苦闘の過去もあるのだ。
曇天火は、謎の面をつけた風魔の男に両親を惨殺され、剣心はかつて「人斬り」として多くの殺傷をしてきた。ツンツンの銀髪を逆立てて「ちわー」とへらへらしている銀時だって、宇宙攘夷戦(なんなのそれは?)でその名をとどろかせた猛者なのである。強さとともに過去の傷があってちょっとおバカ。まさに女の子に好かれるキャラクターということなんですな。