追い詰められた貴乃花親方は抵抗を諦めてあっさり土俵を割った。渾身の力で“ダメ押し”をしようとしていた日本相撲協会執行部は、突き出そうとしていた両手をどこに向ければいいか分からなくなった。
「新体制で貴乃花親方に割り当てられる職務が『審判部』と決まったのは3月28日で、翌日に『年寄』への2階級降格処分も下されたが、直前まで執行部は揺れていた。ここで処遇を間違うと、3期目となる八角理事長(元横綱・北勝海)体制が船出早々に傾く可能性があったのです」(協会関係者)
3月26日に八角理事長が無投票で3選を果たし、新体制が発足。一方、元日馬富士による暴行事件への協会の対応を巡って、春場所直前に内閣府へ告発状を提出していた貴乃花親方は窮地に追い込まれていた。春場所中に弟子の十両力士・貴公俊(たかよしとし)が起こした付け人への暴行事件をきっかけに、一気に守勢に転じざるを得なくなっていたのだ。
貴公俊へは同29日に1場所出場停止の処分が下されたが、「場合によっては引退勧告もあり得る状況で、親方は弟子を守るために“白旗”を上げざるを得なかった」(後援会関係者)のである。
処分発表前日となる28日、貴乃花親方は「臨時年寄総会」に出席するため、春場所が開かれていたエディオンアリーナ大阪に姿を見せた。総会後、貴乃花親方は100人を超える報道陣を前に“平謝り”する事態となった。