以後、理事になった二子山親方は“栃若”として一時代を築いたライバルだった春日野理事長(元横綱・栃錦)とタッグを組み、主流派を占めていく。

「二子山親方の対抗馬と目された大鵬親方は、1980年に理事になったものの、“その先”の芽はなくなっていった。そもそも、理事長職は最大派閥・出羽海一門から選出するのが伝統。1988年に出羽海一門の春日野理事長から禅譲されて理事長となった二子山親方も、2期務めたあとに出羽海理事長(元横綱・佐田の山)に“大政奉還”している。大鵬親方が入り込む余地はなかった。その胸中には“最初に一門内の調整に従ったのが間違いだった”という思いがあったはず」(同前)

◆温存される「一門支配」

 2010年の理事選で、当時37歳の貴乃花親方は二所ノ関一門内の事前調整に従わず、立候補を強行した。

「この時、背中を押したのが大鵬さんだった。貴乃花親方の兄弟子である大嶽親方(当時、元関脇・貴闘力)が大鵬さんの娘婿ということもあったし、“自らの無念を晴らしてほしい”という気持ちもあったと思う」(前出の後援会関係者)

 だが、貴乃花親方には今後、厳しい局面が続く。

「高砂一門の八角理事長(元横綱・北勝海)も、“つなぎ”の理事長です。ゆくゆくは、出羽海一門の藤島親方(元大関・武双山)に理事長職を譲るのが既定路線とされる。貴乃花親方は、理事長はおろか理事にも戻れない可能性もある」(前出の協会関係者)

 昭和の大横綱は“一門制度という旧弊の改革”を平成の大横綱に託した。だが、その道もまた、閉ざされようとしている。

※週刊ポスト2018年4月20日号

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