タレントのビートたけしが自ら立ち上げた芸能事務所「オフィス北野」を退社し、新事務所に移籍した独立騒動は、オフィス北野が新体制構築と経営の立て直しを図る方向でひとまず収束したが、今回の内紛劇で浮かび上がってきた組織内の対立は一般企業にもあること。社長や役員の高額報酬に対する不満、社員や従業員の集団離反──。だが、「辞めることだけが最善策ではない」とアドバイスするのは、社会保険労務士の稲毛由佳さんだ。
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「自分が辞めたら、会社は困るはず」──。会社への不満から退職を決意された方から、このような言葉をよく聞きます。ましてや、自分ひとりではなく、一斉退職となれば、「会社は立ち行かなくなるだろう」と、思うかもしれません。自分をひどい目に合わせた会社を懲らしめてやりたいという気持ちになるのは自然なことですが、組織の底力を甘く見てはいけません。
確かに、一時的には困るかもしれません。けれども、しばらくすれば、新しい人が入ってきたり、同僚や部下が上がってきたりして、退職者の穴は自然に埋まってしまいます。辞めてはみたものの、自分が思い描いたような転職先が見つからず、結局、困ったのは会社ではなくて、辞めた自分だったというのも、よくある話です。
一致団結するパワーは退職することではなく、会社の改善のための交渉に向けるべきなのです。では、交渉のための一致団結の仕方は、どのような方法があるのでしょうか。
(1)労働組合を作る
労働組合には、法律で様々な特典が与えられています。代表的なのが団体交渉権です。労働組合法では、会社が労働組合からの団体交渉の申し入れを正当な理由なく拒否することは「不当労働行為」として禁止されています。
さらに、単に応じるだけではダメで、誠実に交渉に対応する義務も課しています。もし、会社が正当な理由なく団体交渉を拒否したり、誠実な対応を行わなかったりした時には、労働委員会に救済を申したてることもできます。
じつは、労働組合は簡単に作れます。まず、役所への届出や認可といった手続きはいりませんし、会社の承認を得る必要もありません。人数は2人いれば結成可能。あとは、名称、所在地、総会や執行委員会といった意思決定機関、予算の編成や承認方法等を定めた組合規約を作成し、結成集会を開けば、労働組合の誕生です。