社員の給料は安いのに、社長や役員だけが高い報酬をもらっているという不満も、労働組合があれば、給料が安いという愚痴を「労働者の給料を引き上げるべきだ」という交渉にもっていきやすくなります。
社長や役員の報酬が高いと思っていても、実際にいくらもらっているかは、労働者にはわかりません。役員の報酬が高いのではないかと、感覚で言ったところで、「そんなことはない」と否定されるだけです。交渉の俎上にのせるには、推測ではなく、根拠が大事なのです。
上場企業であれば、有価証券報告書に記載されている役員数と報酬の合計から、おおよその報酬額は調べられます。しかし、非上場企業の場合、財務諸表を入手する手段がありません。会社法では、官報や日刊新聞紙等に決算公告として、貸借対照表と損益計算書を開示することを義務付けていますが、中小企業となると、ほとんど決算公告を行っていないため、財務諸表は役員や株主だけしか見ることができないというのが実情です。
もし、労働組合による団体交渉でこうした財務諸表や経理資料の開示を求め、正当な理由なく拒否すれば、不当労働行為に該当する可能性が高いといえます。
ただ、役員の報酬を減らすことだけが、労働者の給料を上げる道ではありません。要は、労働者の給料水準を上げるための予算はどこから捻出してもいいのです。中小企業の場合、税金対策でわざわざ赤字にしている会社が少なくありません。この赤字にするために作られている無駄な経費を見つけ出し、労働者の給料水準引き上げの原資にしてもよいでしょう。
よく「生活が苦しいから給料を上げて欲しい」と、自分の生活を基準にして給料アップを要求する労働者がたくさんいます。しかし、金銭感覚は人それぞれで、他人の暮らしは贅沢に見えるもの。社長が派手な生活をしていると労働者が思っているのと同じように、社長は生活が苦しいと訴える労働者が派手な生活をしているから、生活が苦しいと思うものです。
経営者の最大の関心は、売り上げ拡大であり、利益拡大。労働者の生活水準の向上は二の次なのです。「○○にお金を使うよりも労働者の給料に使ったほうが、モチベーションが上がって売上拡大につながる」と、会社を基準に交渉することが大事です。
(2)「社員会」などの互助組織を作る
労働組合は2人で作ることはできるとはいえ、2人だけでは、いささかパワー不足です。労働組合が力を持つには、組合員の拡大が大きな課題といえます。しかし、労働組合の不人気ぶりは顕著です。ピーク時(1949年)には、55.8%あった組織率は、17%台にまで落ち込んでいます。
労働組合に加入することで、「会社に睨まれる」、あるいは「会社を敵に回したくない」と、労働組合加入に二の足を踏む人も多いだけに、労働組合では、一致団結が難しいことも多いでしょう。このような時は、例えば、社員会のような互助組織から始めるのも一つの手です。
労働組合法が保障する権利や特典は得られませんが、個々が抱える不満や悩みをまとめ、力を合わせて交渉することが可能です。従業員同士の話し合いの場づくりという観点から、社員会を組織。社員会としての意見をまとめ、会社に改善要望を出すのも、立派な団体交渉となります。