年齢を重ねることで体のあちこちが衰えてくると、住環境にも様々なサポート機能が必要となってくる。そこで、要介護者の機能訓練や自立を助けるために工夫された福祉用具の専門相談員、山上智史さんに、高齢家族を支えるためのモノや福祉用具とのつきあい方を聞いた。
◆安心が増える手すり 転倒予防に杖や靴
体の衰えを支えるモノとして山上さんが筆頭に挙げるのは、手すりだ。
「高齢になって足腰の筋力が衰えると、歩く、立ち上がる、座るという何気ない動作のときに不安を感じます。これは元気な若い世代にはなかなか気づきにくいかもしれません。
でも動きによく注目していると、何もつかまるところのない廊下や玄関で、思わず壁に手を出し、時には同じ場所に手垢がついていることも。そこにグッとつかめる手すりがあると、動きはスムーズになり、何より本人が安心です。
また家の中でいちばん事故の多い浴室。湯船をまたいで湯に入るとき、湯船の中で立ち上がるときがリスク大。適切な場所に手すりやすべり止めマットが設置されていれば、安全はもちろん、本人の“慎重に入ろう”という注意を促すことにもつながります」
屋外では杖や靴が強い味方になる。
「杖は、筋力やバランス力が衰えてきた人にとっては心強い支え。杖をつくことで歩くリズムが取りやすく、安定して歩けます。ただ、選ぶ際には身長に合わせた長さが重要。直立して腕をまっすぐ下ろしたとき、手首の位置にグリップ(握り手)がくるくらいの長さがよく、長さが適切でないと、逆に足腰に支障が出たりすることもあります。
一本杖のほか、いろいろな種類がありますが、体の状態により向き不向きがあるので、福祉用具専門相談員などに相談して選ぶのがおすすめです。
また靴は、転倒しにくいようつま先が上がっていて軽く、着脱のしやすい作りが基本。機能性が高く、最近はしゃれたデザインのものも増えていますが、まず両足で履いて足踏みをし、フィットして履き心地がよいことを確かめて。
ちなみに家の中ではスリッパという人が多いかもしれません。スリッパでの歩き方は、いわゆる“すり足”。つまずきやすい歩き方です。転倒予防の観点からはルームシューズに替え、つま先を上げてかかとで着地、しっかり足の裏で踏みしめる歩き方を、室内から心掛けることをおすすめします」