4月にビールの定義変更(麦芽使用比率が67%以上から50%以上に緩和)が行われ、アサヒ、キリン、サントリー、サッポロの大手4社のビールメーカーから続々と定義変更対応商品の“ビール”が発売された。
そこで気になるのが、これまで低価格で人気だった発泡酒(麦芽重量が3分の2未満)や第3のビール(麦芽を使用せず穀類などが原料)などのビール類はどうなってしまうのかということだ。ジャーナリストの河野圭祐氏が各社の戦略から予測する。
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家庭用ビール類市場の内訳は、第3のビールが60%、ビールが28%、発泡酒が12%(容量構成比。出典はインテージSCI)とされ、現時点では価格が安い第3のビールが主戦場となっている。
一方、2020年、2023年、2026年と段階的に酒税改正が行われ、最終的には2026年に、ビール類はすべて350mlあたり54円の課税に一本化される。現在、ビールの課税は77円、発泡酒が47円、第3のビールが28円なので、減税になるビールが復権し、増税になる発泡酒や第3のビールは衰退する可能性がある。
ちなみに、伸長著しい缶チューハイなどのRTDにかかる酒税は、28円から35円と小幅の上がり方なので、特に増税幅の大きい第3のビールへの影響が懸念されるのだ。
もちろん、第3のビールも一定のボリュームは残るだろうが退潮基調になることは避けられない。振り返れば、発泡酒や第3のビールが登場した背景も、通常のビールの酒税が上げられた際、ビール離れに危機感を持ったビールメーカーが繰り出した、いわば苦肉の策だった。
発泡酒でいえば、サントリーが1994年に発売した「ホップス」がその先駆けだったが、1998年にキリンが「淡麗」を投入するとこれが大ヒット。その後、サントリーは発泡酒市場から撤退し、いまではキリンのシェアが6割を超える1強状態だ。だが、発泡酒は価格的にビールと第3のビールの間に挟まれ、市場自体が地味な存在になってしまっている。
しかも今回のビールの定義変更では、レモンピールやオレンジピールといった新たな副原料の使用が麦芽重量の5%を超えてしまうと、ビールでなく“発泡酒”扱いになってしまう。メーカーとしては晴れてビールとして売りたいから、規制値の5%以下に抑えてビールにするケースが多くなるはずだ。