同じ改憲論者でも安倍首相の姿勢は対照的だ。改憲支持派が衆参で3分の2の勢力を持ついまがチャンスと国会発議を狙い、「この道しかない」と数の力で強行しようとしている。
「憲法学者の7割が自衛隊は違憲といっている。憲法改正で違憲論争に終止符を打つ」
この言葉に象徴されるように、反対派と論争をしないための改憲に進まんとする安倍首相の姿勢に中曽根氏は危惧を抱いているという。100歳を迎えた後も中曽根氏の取材を続けている松田喬和・毎日新聞特別顧問が語る。
「中曽根さんには、安倍首相にはなぜ、憲法を改正するのか、改正してどういう国をつくるかの“哲学”が見えないことが不満のようです。中曽根さんは頭が柔軟で、若い頃は安倍さんと同じように“米国に押し付けられた憲法論だから改正すべき”と唱えていたが、国民の声を聞いて、どんな憲法がいいか国民主導でつくるべきと変わった。だから改憲には国民全体を巻き込んだ議論を起こすことが欠かせないと考えているが、安倍さんはそれが見えない」
100歳を迎えた中曽根氏は〈政治家は常に歴史法廷に立つ被告人である〉ともコメントした。その言葉の重みを安倍首相は、どこまで理解しているのだろうか。
※週刊ポスト2018年6月15日号