いまやCT(コンピューター断層撮影)やMRI(核磁気共鳴画像法)などの画像診断は、医療界において欠かせない。一方で、多くの患者を抱える大病院で「画像診断の見落とし」が起きていたことが明らかになっている。医療事故の分析などを行なう「日本医療機能評価機構」によると、画像診断報告書の確認ミスは2004~2013年の10年間で17件報告されていたが、2014~2017年の4年間だけで41件に急増したという。
千葉大学医学部付属病院では、2017年7月、50代男性が肺がんの疑いで同病院の呼吸器内科を受診した。担当した医師が男性の過去のカルテを調べたところ、約1年前、頭頚部腫傷の確認のため、CTによる検査を受けていたことが分かった。その画像診断報告書に「肺がんの疑いがある」と書かれていたことが発覚。当時の担当医がそれを見落としていたため、治療開始が1年遅れてしまったのだ。こうした問題が発生する原因の一つは放射線科医の不足にもある。
もっとも、そうした医師側の体制が整ったとしても、画像診断に頼りすぎるのは危険である。画像診断で見抜ける病気には、技術的な限界があるからだ。画像では判別するのが難しいがんの種類について、消化器外科医で上福岡総合病院名誉院長の喜多村陽一氏が解説する。
「がんは通常、ポコッと突起が出るのですが、スキルス胃がんは下に広がっていき、表面上は平坦なので早期のものは画像で判別しにくい。膵臓がんは、臓器の裏(背中側)にあり、しかも良性腫瘍と判別しにくいので画像では見落としやすいといえます。食道がんは、数が多い胃がんに注意が向くため、うっかり見落とす場合もあります」