長谷川さんはやさしい声で、「私はそうすべきだと思いますよ。その後の対応は専門医に相談しながら工夫が必要ですが…。でも大丈夫、認知症は誰でもなります。私ももうすぐなるでしょう(笑い)」と会場を和ませた。私も、ふっと肩から力が抜けた。
講座から5年。89才になった長谷川さんは今年、自身の認知症発症を公表。その後も当事者にしか語れない症状や感覚をしっかり発信している。おかげで私の中の認知症のイメージはとても穏やかだ。
さて、認知症婦人2人はというと…。
娘さんに叱られ、少々しょんぼりしたデイサービス仲間に、「あら、私もそうよ。何度も同じこと言っちゃうのよね」と、母は笑いかけていた。
私も2人越しに、娘さんに向かって小声でささやいた。
「全然、大丈夫ですよ。うちも認知症なんだから(笑い)」
恐らく娘さんは、上手に相づちを打つ母を認知症だと思わなかったのだろう。かなり驚きながらも、少し気持ちが緩んだようにほほえんだ。
※女性セブン2018年7月5日号