「野球には『謎の相性』というものが確かにある。クリーンアップを張る主軸は打ち取れるのに、なぜか脇役の選手を苦手にするエース級というのがいるんです。今季、10勝でハーラートップの広島・大瀬良大地(27)を見ても、打率2割台の阪神・伊藤隼太(29)にここ2シーズンは打率5割と打たれています」
こうした理解しがたい「カモ」「天敵」はなぜ生まれるのか。辛口評論でお馴染みの江本孟紀氏はこんな言い方をする。
「最初は、投手の側が相手を舐めてかかるところから始まるんだと思います。それで1回打たれると、バッターは格上から打ったことで自信を持つし、ピッチャーのほうは“なんであんな奴に……”と悩み始める。そうすると、不思議なものでその相手にだけ、球がド真ん中にいったりする」
マサカリ投法で通算215勝をあげた村田兆治氏は、現役時代にまさしくそんな体験をしたという。
「阪急にいたマルカーノ(1975~1982年)には、とにかく打たれた時期があったね。アウトコースに投げているのに、吸い込まれるように真ん中に入っていくんだから腹が立ちますよ。タイミングを狂わせるためにクイックで投げたり、チームメイトの仁科時成からサイドハンドの投げ方を聞いて試したりもしたけど、自分のやり方を変えようとした時点で負けているね」
一度、負のスパイラルに嵌まると苦手意識がどんどん増幅していくわけだ。
※週刊ポスト2018年7月20・27日号