首相のお気に入りの杉山は、2016年から今年1月まで事務次官を務めた。そのあと河相、齋木という2人の先輩次官を飛び越え、駐米大使に抜擢され、異例の人事だと話題になる。外務省の関係者が続けた。
「杉山さんを駐米大使に抜擢したのは安倍総理だといわれますが、その杉山さんの後任次官に就いたのが、秋葉(剛男)さんでした。順当ではありますが、秋葉さんは総理政務秘書官の今井(尚哉)さんと同期の1982年入省で、2人は日米原子力協定などのエネルギー政策で意気投合してきた。このトップ人事は総理だけでなく、今井さんにとっても、願ったり叶ったりだったはずです」
こうした外務省の幹部人事に、内閣人事局の力がおよんでいるのは、繰り返すまでもない。
元来、米国寄りの政策を旨とする外務省では、親米派の歴代次官の結束が固いとされてきた。が、第2次安倍政権の政治主導という旗印の下、権力構造が変わってきたようだ。次第に首相や官房長官に仕える「官邸官僚」たちが、外交面でも主導権を握っていった。なかでも目立つのが、首相の分身と呼ばれる政務秘書官の今井尚哉だ。
◆「首相の親書」を書き換えた
官邸官僚たちの動きは、首相官邸の機能強化の一環である半面、外務省外しという側面も色濃い。外務省OBが言葉を選びながら語った。
「いまや官邸が外交の窓口になり、外務省はそのサポート役に回っています。それはそれでうまく機能すればいいのですが、やはり問題も少なくない。蓄積された外務省のノウハウが生かされず、外交のパイプがうまく機能していないケースもあります」