片山:「持たざる国」なのだから、陸海の共同作戦の思想が軍に育ってよかったのに、そうならなかった。陸軍と海軍が別々にお互い秘密に原爆研究をしていたのがこの国です。
佐藤:陸軍と海軍ではねじの大きさも違って、部品の互換性もない。情報も共有していないから海軍が敵軍の軍艦と間違えて、陸軍の船を撃ったなんて事故も起きた。象徴的なのは、陸軍が航空母艦を造ったこと。世界の軍事史で、航空母艦を持った陸軍は旧陸軍だけだと思いますよ。
片山:海軍が非協力的だからそうなってしまう。
佐藤:限られた資源を総動員するといいながらも、極端なセクショナリズムがそれを妨げるわけですね。
片山:そのセクショナリズムを越えようとすれば、天皇を使うしかない。無力の天皇を実力者に仕立てる。天皇は形式上では軍も行政も統率できるというのが明治憲法上の建前でした。
しかし、仮にその天皇大権を行使して、陸海軍と軍需関係の行政と企業と科学技術者を大同団結させ、天皇が率先して最高の性能で部品の規格も統一された戦闘機を造ったとしましょう。でもその飛行機で負けたら天皇の責任になる。やはり天皇は無力でいてくれないとうまく行かない。それが国体の護持ということです。
佐藤:問題なのは、示し合わせてやっているわけでなく、なんとなくそうなってしまうことではないですか。
軍に限った話ではないんです。1941年に教会を全部集めて結成された日本基督教団も形としては束ねられているんだけど、日本基督教団一部が日本基督教会で、日本基督教団二部がメソヂスト教会で……と部制の縦割りで元の組織がそのまま残っていた。