佐藤:私が玉砕思想の名残を感じたのが、バブル期の「24時間、戦えますか」という栄養ドリンクのCMです。本当に24時間戦ったら死んでしまうけど、あれが受け入れられて流行する素地が日本社会にはある。
片山:一番、「持っていた」はずのバブル期のCMですら、こうなのですからね。
佐藤:さきほどのガラケーの話ではないですが、日本型のファシズムは玉砕思想を内包するまでの独自進化を遂げました。これを戦前の話と捉えるのは誤りです。日本のファシズムを考えることは、いまの日本社会が内包する問題を読み解く一つの鍵になるはずです。
【プロフィール】
●さとう・まさる/1960年生まれ。1985年、同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。主な著書に『国家の罠』『自壊する帝国』など。国際情報誌『SAPIO』連載5年分の論考をまとめた『世界観』(小学館新書)が発売中。
●かたやま・もりひで/1963年生まれ。慶應大学法学部教授。思想史研究家。慶應大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。『未完のファシズム』で司馬遼太郎賞受賞。近著に『近代天皇論』(島薗進氏との共著)。
※SAPIO 2018年7・8月号