平成も残すところ10か月。閉塞感が漂う平成後期を象徴するように、様々な事件が立て続けに起こっている。とりわけ官僚たちの不祥事が目に付く。日本を支えてきたトップエリートはなぜ失墜したのか。作家・佐藤優氏と思想史研究者・片山杜秀氏が「ファシズム」という切り口から現代日本を読み解く。
佐藤:官僚たちの職業倫理に、国民から疑いの目を向けられるような事件が相次いでいます。官僚の中の官僚と呼ばれる財務官僚トップの福田淳一前事務次官は、女性記者に「おっぱい触っていい?」「手、縛っていい?」と迫る音声データを公開されたにもかかわらず、本人はそれを認めなかった。
片山:これまでの官僚の不祥事と位相が違う事件でしたね。その前後には、モリカケ問題で佐川宣寿前国税庁長官や柳瀬唯夫元首相秘書官が国会でいい加減な答弁を繰り返した。次々明るみに出る高学歴エリートの不祥事に、この国はどうなっているのかと暗澹たる思いがしました。
佐藤:しかも北朝鮮情勢が大きく動いていたさなかに「言った、言わない」「会った、会わない」で国会を空転させたわけですからね。彼らの罪は重い。
片山:一連の騒動で私が思い出したのが、旧海軍もですが、特には旧陸軍の文書ですね。「無敵皇軍」ですから「絶対に勝つ」という前提ありき。「負ける」ことを内心考えていても、そう赤裸々には書けないので、深読みしないと意味不明で、端から見ると何を言っているのか分からない。
佐藤:事実や論理よりも気合いが議論を左右する。意味が分からなくなるのは当然です。