普通、プロトコルは「議定書」「原案」。「命題」ならプロポジションだ。しかし、「命題」を「命のように重要な主題」の意味に誤用する例が多い。これは「題を命る(述べる)」ことだ。命と題がレ点(返り点)で返るのだ。
古田がここで言いたいのは「プロトコル命題」のことらしい。またも『20世紀思想事典』に頼ると、論証の基礎になる最も基本的な命題だという。ああ面倒くさい。ああ紛らわしい。これでは朝鮮朱子学と一緒だ。
二〇一六年四月号「正論」ではこんなことを書いている。
「〔自分は〕他分野では素人なので盲蛇(もうじゃ)で言っているに過ぎない」
ルビは原文のままである。「盲(めくら)、蛇に怖(お)じず」とは言う。無鉄砲なことだ。略して「盲蛇(めくらへび)」とも言う。しかし、「盲蛇(もうじゃ)」では意味が通じない。馬鹿な編集者が気を利かせたつもりで誤ルビしたのかと思い編集部に問い合わせると、すまなさそうに「いや、古田先生の原稿通りで…」との返事だった。偉い先生の原稿なので何も言えなかったのだろうか。
●くれ・ともふさ/1946年生まれ。日本マンガ学会前会長。著書に『バカにつける薬』『つぎはぎ仏教入門』など多数。
※週刊ポスト2018年8月3日号