名古屋場所で連続休場は8場所に伸び、横綱としてのワースト記録を更新した稀勢の里が、いよいよ窮地となる。稀勢の里をかばう“論拠”の一つとなっていたのが、元横綱・貴乃花(現・貴乃花親方)が7場所連続休場を経て土俵に復帰したという“先例”だ。だが、稀勢の里と貴乃花では事情が異なっている。
貴乃花は2001年5月場所で右ひざの大怪我を負いながら、ライバルの横綱・武蔵丸を破って22回目の優勝。しかしその影響で翌場所から7場所連続で「全休」し、2002年9月の復帰場所で再び武蔵丸と優勝争いをして12勝3敗の成績を残した。
「一方の稀勢の里は最近3場所に限っては全休ですが、今年初場所では4つ、昨年11月場所では5つの“金星配給マシーン”と化して途中休場している。この“ちょっと出て負けたらすぐ休む”という“職場放棄”を、フランスに渡って手術し、懸命にリハビリに励んでいた貴乃花と同列に論じることがそもそもおかしい」(担当記者)
中堅親方が嘆く。
「最高位である横綱は“弱くなれば王座から落ちる”のではなく、“辞めなければいけない”。それほど横綱の権威は重い。だからこそ、昇進には品格・力量ともに厳しい審査がある。
ところが今の状況は、引退に関して明確な基準がないのをいいことにダラダラと“延命”が許されている。“19年ぶりの日本人横綱には寛大”という協会のご都合主義が招いたことではないか」