女学生姿で颯爽と自転車に跨るより江は泉鏡花作品のモデルになるほどの美形で、夫の留学資金を貯めるべく自分も働こうとしたり、福岡時代は柳原白蓮と交流するなど、近代女性らしい凛とした姿が目に浮かぶ。
そして何より彼女が書き送り、愛をこめて収集した言葉たちの美しいこと! 丁寧に言葉を尽くし、思いを尽くした時代に、しばし時間旅行するような1冊である。
【プロフィール】でくね・たつろう/1944年茨城県生まれ。中学卒業後、月島の古書店に弟子入りし、1973年高円寺で芳雅堂を開業。自ら解説を載せた古書目録「書宴」による通信販売も始め、「その巻末文をある編集者が読んで本にしてくれたのが、1985年のデビュー作『古本綺譚』です」。1992年『本のお口汚しですが』で講談社エッセイ賞、1993年『佃島ふたり書房』で直木賞、2015年『短篇集 半分コ』で芸術選奨文部科学大臣賞。現在日本文藝家協会理事長。165cm、70kg、A型。
■構成/橋本紀子 ■撮影/国府田利光
※週刊ポスト2018年8月3日号