「高橋先生と話しながら、大義くんは普通の高校生、どこにでも当たり前にいる存在だったけれど、ただひとつ、与えられた時間をちゃんと生きよう、生ききろうとした。そのことを伝えられたらいいなと思いました」
今でも浅野さんのご家族や友達とLINEで言葉を交わしているという中井さん。本が完成したという連絡を受けて、浅野さんの祖父から中井さんにひとつのLINEが届いた。完成にあたり、164冊の本を注文したいという。告別式に参加した吹奏楽部員の数と、同じ数の164冊──。
浅野さんの「市船ソウル」と彼が残した生き様は、家族や友人だけでなく、中井さんをはじめ、多くの人の心を揺り動かし続けている。
【プロフィール】なかい・ゆりこ/1977年兵庫県出身。劇作家・演出家・演技指導講師。1996年、神戸で旗揚げされたガールズ劇団TAKE IT EASY!に座付き作家として入団。2010年、劇団中井組の座付き作家・演出家に就任し、2013年まで活動。2018年2月mosaiqueを結成。近年の代表作には「Earth Rise ~世界のはじまりに君に逢いにいく~」(脚本・演出)、「mosaique File1『PRISM』」(脚本・演出)など。8月8日発売の『20歳のソウル 奇跡の告別式、一日だけのブラスバンド』が初の著作。